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百伍圓読書録:綿矢りさ『インストール』読みました!

百伍圓読書録のこと


ブックオフの105円コーナーって楽しいですよね。
品揃えが豊富ですし、五十音順に整理されていて探すにも便利です。流石にリアルタイムのベストセラーや流行作家の新刊なんかは手に入りません。でも、そこには沢山の名作が置かれています。

その105円コーナーで購入した作品を、機会を見て紹介していきます。簡単な感想も添えます。作品の選択については、コンスタントに105円コーナーに並ぶ作品、つまり手に入りやすい作品を選びます。

安いからと、侮るなかれ。そこには愉快な読書世界がありますよ。
さて、百伍圓読書録の始まりです。

綿矢りさ『インストール』


1冊目は、綿矢りさ『インストール』です。
綿矢りさは2012年『かわいそうだね?』で大江健三郎賞を受賞し、再注目されています。そのため状態のよい本だと250円位になっているかもしれません。でも89万部(単行本60万部、文庫本29万部)も発行されているので、コンスタントに105円コーナーに並ぶはずです。
それと『蹴りたい背中』も同じように手に入りやすいはずです。

<感想>
 『インストール』は、まるで散文詩です。綿矢りさ固有の日本語で書かれた散文詩。それは人間を生々しく見つめ、詠まれます。

さらに外から、豆腐屋のプー…アー…というやるせない笛の音色が段々近づいてくるのが聞こえてますます歯がゆく、弱り、このまま私、廃人になってしまうのではないかと本気で怯えた。しかし私は大掃除、という愉快な企画をふっと思いつけたのでなんとか救われた

(河出文庫版p15より)
 こんな何度も読み返したくなる文章がいくつもあります。独特の調子で、けれど率直で心地よい。軽やかでいて、緩急がきいている。彼女は、彼女だけが知っている日本語を操り、物語を綴ります。

河出文庫版の巻末解説で、高橋源一郎が『インストール』の文章がいかに完璧かを論じています。その意見に同意します。
ただ正直な所、私は文章の完璧さを論じられる程には本を読んでいません。ですので正確を期すると「この文章が完璧な文章なのだ」と言われたなら納得する、ということになります。わけても素晴らしいのは、読点の位置です。上の引用文は、その読点の良さがよく表れた箇所を選びました。

『インストール』は綿矢りさが17歳のときの作品です。出版当時は若すぎるというだけで避けていましたが、いまさら読んで、いたく胸を打たれました。本当、食わず嫌いはいけないですね。

<後記>
でもですね、そんな食わず嫌いした作品に挑戦するにも105円コーナーは重宝します。それも105円コーナーが楽しいと思う理由です。

ということで、百伍圓読書録を始めます。
ちなみにブックオフの関係者ではありません。
(文中敬称略)

かわいそうだね?

かわいそうだね?