百伍圓読書録4:有川浩『阪急電車』を読みました!
雑感
『阪急電車』、期待してたより面白いなあと思いました。この作品が映画化されていることを知っていましたが、「映画化=単純な物語」という完璧な予断を持っていて、期待しなかったのです。たまたま近くにあったから、暇つぶしに良さそうだからと読み始めただけのことでした。
しかし冒頭から、これは面白いなあと感じました。ヒトの気持ちの微妙なヒダに見え隠れするナニモノかを、上手に表現していたからです。言葉にされると思い当たる、意識と無意識の間にある感情が綴られていました。
読み進めると、それだけでなく人物の性差、年齢差、立場等々による書き分け、物語の組み立て、ミリタリー関係等の小ネタの挿入、阪急今津線という現実の場の舞台化、様々な面での手際の良さが光っていました。
作品としてはおそらく小品に入りますが、ここまで丁寧に作られていて、且つその丁寧さが作品の価値に結びついた小説は多くないと思います。読み終えて、完全に期待以上のものを受け取りました。
それと、有川浩さんは演劇関係の活動もしているそうですが、その経験がよく出ている作品だとも感じました。登場人物が場を転換させながら、関係性を組み上げていくやり方は演劇的であり、その要素が作品にうまい具合に活かされていたからです。
読後感の爽やかさも個人的な好みに合っていて、とてもよい読書体験でした。
入手しやすさについて
こういった作品との出会い方をすると、やはり食わず嫌いは良くないなあと思います。まず読まなければ、出会いもありません。それだけは確かです。
幸い『阪急電車』は売上が100万部を越えています。有川浩は今まさに人気作家なので、なかなか105円コーナーに作品が並びませんが『阪急電車』は数少ない例外で、入手しやすいはずです(あと、自衛隊三部作が比較的入手しやすい気がします)。
ですので、もし有川浩を読まず嫌いしている方はこの作品から始めるのも一つの手だと思います。
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