ナイフとフォークで作るブログ

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『一週間フレンズ。』1話を見た感想。  〜 ささやかな希望を、想像してみた 〜

 『一週間フレンズ。』を1話だけ見た。
 一週間毎に記憶を失っていくヒロインと、彼女を慕う少年の物語だ。


記憶をめぐる物語

 物語が進んでも、記憶(思い出が)積み上げられないとなると、終わるときにも状況は変わらない訳で、それではあまりにも救いがないと思った。
 しかし、記憶をめぐる物語ということで、小川洋子博士の愛した数式』と、映画監督になる以前の是枝裕和NHKで発表したドキュメンタリー番組を思い出しつつ考えていると、僅かな希望が思い浮かんできた。


短期記憶と長期記憶

 『博士の愛した数式』と「是枝ドキュメンタリー」はどちらも、ある身体的ダメージを境として、それ以降の記憶を蓄積できなくなってしまった人物に関する作品だ。少し詳しく言えば、短期記憶については問題ないが、長期記憶を保持できないという症状だったと記憶する。
 例えば、読書をトイレなどで中断しても、再び読み始めた時にどこまで読んだかを覚えているような記憶は短期記憶であり、そうではなく、ある作家についてA作品、B作品、C作品と読破していった経験を、より長いスパンで覚えていくのは長期記憶である。


一週間フレンズ。』のヒロイン

 一方で『一週間フレンズ。』のヒロインは、毎週の月曜日に、家族については大丈夫だが、友達との記憶(思い出)が失われるという問題を抱えている。
 これは、かなり細かな制限のある記憶障害だ。
 しかも、彼女自身が記憶が失われることについて自覚的である。このことは記憶障害の重要な点である。「記憶が失われること」を覚えているということは長期記憶に属しているからだ。つまり彼女から、長期記憶を保持する能力は失われていないのである。


「是枝ドキュメンタリー」の男性

 「是枝ドキュメンタリー」の取材対象であった男性は、ある病気で入院した際に、経口での食物摂取ができず、点滴で栄養補給していたが、特定の栄養についての補給がなされず、脳にダメージを負ってしまう。
 彼は、新たな記憶は一日程度しか保持できず、一晩寝て起きると、昨日の出来事はおろか、自らの記憶障害についても忘れてしまっているのである。
 朝起きて、奥さんから自分の障害について説明され、じっと考え込んでいる姿はとても印象的だった。


一筋の希望

 だが、『一週間フレンズ。』のヒロインは、自分の抱える問題をしっかり把握している。
 これは勝手な想像だが、彼女の記憶障害は身体的な問題ではなく、精神的な問題によるのではないだろうか。そう考えると、一見救いがなさそうな物語に、一筋の光明が見えてくる。


 なぜなら、精神的な問題ならば、回復の可能性が僅かながら期待できるからだ。ただ、この可能性にしても、脳のダメージに比べれば回復の見込みが幾分高いといった程度のことだ。
 それでも、思い出(記憶)が積み重ねられずに、結局絶望するかもしれない物語を見るよりも、こんな屁理屈みたいな理由でも希望を持って見て行きたいなと考えてしまうのである。

一週間フレンズ。(1) (ガンガンコミックスJOKER)

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