ナイフとフォークで作るブログ

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マイナス状況の日常漫画①:つくみず『少女終末旅行』

マイナス状況の日常漫画

 日常漫画はいろいろ有りますが、近頃、マイナス状況を舞台とした面白い日常漫画が幾つか目に付いたので、その中の一つを紹介します。


 紹介に先立って「マイナス状況」について説明をしておきます。それは客観的に見れば不幸だったり悲惨だったり、決して平穏とは言えない状況全般です。それらをまとめて「マイナス状況」と勝手に称しました。
 そのマイナス状況のなかで、状況に価値(意味、深刻さ)を見出さず、また悲惨、不幸、不穏といった要素を(あえて)感じさせずに、ほのぼのとした日常を描く漫画がつまり、マイナス状況の日常漫画です。
 そういったマイナス状況の日常漫画が、最近同時的に数作品発表されているのですが、それらは単に日常漫画のバリエーションとして浮かみ消えていくのか、あるいはジャンルとまでは行かなくとも、漫画を分類する際にひとまとまりとして認識される程度には発展していくのか注目しています。

つくみず『少女終末旅行』

 おすすめマイナス状況日常漫画の一作品目は、つくみず作『少女終末旅行』です。
少女終末旅行 1 (BUNCH COMICS)

少女終末旅行 1 (BUNCH COMICS)

 この作品は文明が崩壊した後の終末世界を、チトとユーリという少女二人が、ケッテンクラートに乗って旅する物語です。
 それ故に『少女終末旅行』。「終末」は「週末」と掛けてますよねっていうのは、恐らく蛇足。


 補足すると、ケッテンクラートというのは半装軌車と言い換えられますが、それでも分かりかねます。簡単に説明すると、オートバイの前半分を残しておいて、後ろにキャタピラーを履いたトラックが付いているような車輌です。写真があったので貼っておきます。
http://www.flickr.com/photos/47676646@N08/8112147164
photo by jambox998


 また、旅行とありますがチトとユーリはいわゆる旅行をしている訳ではありません。むしろ彼女達が旅行という概念を理解しているのかも分かりません。二人の居る終末世界には、本が殆ど残されていません。ケッテンクラートは残っているのに、私達が当たり前に享受している文明、例えば言葉や音楽などは失われた世界なのです。
 ですので、彼女達は旅をしているという意識は無いはずです。ただただ移動を続けているだけなのです。


 いまのところ彼女達の向かう目的地ははっきりしません。おそらくは食料や電気、燃料が簡単に手に入る場所を探しているのだとは思いますが、明確な意志は示されないままです。
 そして廃墟だらけの終末世界を彷徨う彼女達は、自分たちの現状を悲観しているようには見えません。むしろ、食事を探したり、工夫して風呂をD.I.Y.する日々をのんびりと過ごしているように感じられます。
 コミックの帯には「終末が日常だ。」というキャッチコピー。まさにその通り。
 まずは『少女終末旅行』をおすすめのマイナス状況日常漫画の一作品目として紹介します。