上橋菜穂子『夢の守り人』『虚空の旅人』を読んで
上橋菜穂子『夢の守り人』と『虚空の旅人』を続けて読んでいます。いわゆる<守り人シリーズ>の3作目と4作目の作品です。
大雑把な印象としては『夢の守り人』はタンダの内面を描いた「個人的な物語」であり、『虚空の旅人』はサンガル国を中心とした国家規模での闘争、政争についての「陰謀の物語」であるといった具合です。
シリーズ2作目『闇の守り人』がバルサの「個人的な物語」と、それに関わるカルバン国の「陰謀の物語」が複合された作品だとすると、『夢の守り人』と『虚空の旅人』は主体は違えど、その二つのテーマを分けてそれぞれに配分した作品のように思われます。
その「個人的な物語」と「陰謀の物語」のどちらを好むかは人それぞれでしょう。前者には深く彫るように読み進める面白みがあれば、後者には胸を躍らせ駆けるようにページをめくる楽しみがあります。
上橋菜穂子の作品は、全体の10%ほどしか読み終えていませんが、『夢の守り人』と『虚空の旅人』に、上橋菜穂子の作品世界の二つの典型が顕れているのではないかと推測したくなりました。それが些か勇み足な予想であることは否定しません。しかし、上橋作品を解釈するとっかかりを得たという感触だけは確かだと感じています。今後、他の作品を読むことがますます楽しみになりました。
- 作者: 上橋菜穂子
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