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ナイフとフォークで作るブログ

小説とアニメ、ときどき将棋とスポーツと何か。


米澤穂信『秋期限定栗きんとん事件』精読1

小説・文学

「それなら、わかる。……きっと、雪の降った朝、一番に道に出て、足跡をつけていくような気分」
(中略)
「それで、他のひとがもう足跡をつけられないように、ぜんぶ雪かきしちゃうの」

米澤穂信秋期限定栗きんとん事件』上巻 創元推理文庫 p47、p48)

 これは小佐内ゆきの言葉です。どういった文脈で言われたかは問題では無いので割愛します。
 最初のセリフは、それこそ他愛もない無邪気なもので同じように感じる方も多いでしょう。注目したいのは二番目のセリフの方です。
 この「他のひとがもう足跡をつけられないように、ぜんぶ雪かきしちゃう」という思考の裏には、小佐内さんの、自分の領域にあるものに対する強い執着が見て取れます。小佐内さんが復讐を好むことは、小鳩くんが折に触れ言及しています。その復讐への嗜好を支えているのが、このセリフに顕れているような彼女の執着心ではないでしょうか。
 そう考えると『秋期限定栗きんとん事件』上巻228頁での、瓜野くんが小佐内さんに対して取った行動と、それに対する小佐内さんのレスポンスの理由がはっきりと理解できます。
 何故ならそれは、これ以上ない程に小佐内さんの領域にあるべきものだったのですから。

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)