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ナイフとフォークで作るブログ

小説とアニメ、ときどき将棋とスポーツと何か。


「将棋電王戦FINAL 第5局 阿久津主税八段 vs AWAKE」の感想

将棋

阿久津主税八段 vs AWAKE

 2015年4月11日に行われた「将棋電王戦FINAL 第5局 阿久津主税八段 vs AWAKE」への感想は、大きく二つあります。
 一つは阿久津主税八段が、AWAKEの2八角打を誘導する所謂「山口システム」を採用したことへの残念な気持ち。もう一つはAWAKE開発者巨瀬亮一さんが対局後に明瞭に自分の意見を述べたことへの感心です。


 ※)「山口システム」が生まれた経緯は 将棋ソフトの死角をついた“ハメ手”で100万円獲得【将棋電王戦レポート】 | 日刊SPA! に凡そのことが記されています。
 ※2)この第5局の簡単な情報は以下の記事をお読み頂けると分かると思います。
将棋:電王戦棋士側勝利呼んだ「わざと隙見せる作戦」 - 毎日新聞
電王戦最終局、異例の「21手投了」に至ったAWAKEの真意は 「一番悪い手を引き出して勝っても意味ない」 - ねとらぼ


残念な気持ち

 阿久津八段が「山口システム」を採用したことが何故残念なのかというと、現在ではプロ棋士対将棋ソフトの対局を見る際に、勝敗への関心をあまり持たなくなったからです。勝敗よりむしろ人間とソフトの棋力が拮抗している今だからこそ見られる熱戦に興味があります。
 もちろのそれは傍観者だからこそ持ち得る感慨です。実際に将棋を指すプロ棋士からすれば負けは、文字通り何よりも避けたい、耐え難いことなのでしょう。しかし傍観者は傍観者の無責任さを捨てられません。その必要もありませんし。
 人間とソフトが実力伯仲している状況が今後そう長く続くとは思えません。別な言い方をすると、例えば十年後にソフトが人間を圧倒していて全くおかしくありません。だからこそ今はプロ棋士と将棋ソフトが一局を存分に指し切る将棋が見たいです。「2七角不成」が話題となった第2局「永瀬拓矢六段 vs Selene」戦も永瀬六段には不成を選ばず、誰が見ても勝ちだという局面まで指し切って欲しかったです。
 そして今回の第5局も阿久津八段とAWAKEが存分に実力を出し切った将棋を見たかったのです。ですので阿久津八段が「山口システム」を採ったことが残念に感じられました。


感心

 将棋界においてプロ棋士は強い権威を持っています。アマチュアがプロ棋士に物申すとういことは滅多にあることではありません。そういった状況にも関わらず対局後のインタビューや記者会見で、阿久津八段が「山口システム」を採用したことを正面から批判した巨瀬さんの明確さに感心しました。驚かされたとも言えます。
 巨瀬さんの言葉の中でも印象に残ったのは、阿久津八段の判断は「プロの存在意義を脅かす」と云った言葉です。将棋界でアマチュアがプロの存在意義について語ることなど想像もしませんでした。しかも当のプロ棋士を目の前にして。
 巨瀬さんはプロ棋士に成れなかったとはいえ奨励会に所属しプロ棋士の世界を垣間見た経験があります。ですので他のアマチュアに比べればそういったことを口にすることに抵抗が無かったのかもしれません。しかしそれでも、あれほど頑なに自らの意見を主張した巨瀬さんの姿は、日常ではそうそう目にすることが出来ない種類のものであり、その強さにとても感心させられました。


 以上の二点が「将棋電王戦FINAL 第5局」についての感想のうちでも、より強く心に残ったものです。

阿久津主税の中盤感覚をみがこう (NHK将棋シリーズ)

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