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田島列島『子供はわかってあげない』上巻の感想 〜これは10代に読んでもらいたい漫画です〜

 「このマンガがすごい!2015」で『子供はわかってあげない』を知ったときに、絶対面白い漫画だと思いました。タイトルの言葉選びのセンスと、そこに垣間見える気迫にはっとさせられ、同時に表紙イラストのほのぼのとした雰囲気が、そのタイトルと妙に噛み合っていてこれはただ事ではないと思ったのです。


 実際に上巻を読んでみて、今のところは『子供はわかってあげない』の意味することまでは分かっていませんが、どうやら主人公のサクタさんが大人(親)や異性(もじくん)を鏡として自分を発見する物語なのだろうという予想は付きました。そしてやはり非常に魅力的な作品だと確信できました。


 『子供はわかってあげない』からは、小説を例にすると恩田陸の『夜のピクニック』と共通する主題を感じ取りました。この漫画は講談社の「モーニング」に連載されていたということですが、「モーニング」の読者層(平均年齢が43~44歳ぐらい〔※〕)よりもずっと若い人たちに読んで欲しい作品だと思います。その読んで欲しいと思う人たちの年代が、『夜のピクニック』とよく重なるのです。
 手元に原本がなく正確な文章を引用できないのですが、『夜のピクニック』に「ある本を読むタイミングを逃してしまった、もしもっと早くにその作品を読んでいれば、それは自分にとって大事な作品になったはずなのに」と、登場人物の一人が後悔を表明する場面があります。


 この場面で触れられている作品に出会うタイミングというのは、やはり大切なことで、大人になってから『子供はわかってあげない』を読みノスタルジーやカタルシスを感じるよりも、むしろ中学生くらいに出会い、自分の中にもある不安定さと向き合ったほうがずっと良いように思われます。
 下巻まで読むと、あるいは全く別な感慨を持つかもしれませんが、上巻だけを読んだ今はそう感じています。


〔※〕 「モーニング」が身体を張って証明する。漫画の時代はこれからだ:日経ビジネスオンライン を参照しました。