ナイフとフォークで作るブログ

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桜庭一樹『私の男』を読んで  〜土地と女と男と〜

 桜庭一樹は土地を描く。
 桜庭一樹作品の登場人物は、ある土地において(『私の男』では奥尻と紋別)、周囲から期待される居場所と、自分が心地よいと思う居場所の間に齟齬があり、その齟齬を埋められずにいる人たちだ。

 彼らのうちの幾人かは、その齟齬と何とか折り合いをつけて生きていく(例えば『赤朽葉家の伝説』の万葉)。

 また、彼らのうちの幾人かは、その齟齬に傷つき(例えば『少女には向かない職業』の二人の少女)、ときには土地から弾き出される。

 『私の男』は、土地から弾き出された人物についての物語だ。そして、弾き出されながらも、真実は、キタと海に誰より強く囚えられ続ける女と男の物語が『私の男』なのだろう。

私の男 (文春文庫)

私の男 (文春文庫)