J・P・ホーガン『星を継ぐもの』感想 〜ミステリー小説として楽しむ〜
これまでSF作品にあまり親しんでこなかったこともあり、サイエンスの要素は最低限の理解で済ませつつ読んだ。それでも『星を継ぐもの』は楽しめる作品だった。
SFのサイエンスに興味のある人や、理系の勉強をした人ならばより深く楽しめるのかもしれない。しかし僕のような知識のない人間が、その点をよく理解しながら読むと時間が掛かり過ぎる。そのため、物語の筋が分からなくならない程度の理解で済ませた。
そのようにサイエンスの部分については、作品を味わい切れたとは言えない。けれど『星を継ぐもの』はSF小説でありながら、同時にミステリー小説でもあった。だからこそ楽しめる作品だったのだ。
本作品では、月で亡骸が発見された「ルナリアン」チャーリーの正体を解明することが、終始大きなテーマとなっている。そこが本作品がミステリー小説とも捉えられる所以である。
作中、チャーリーの正体への仮説と反駁が反復される。新たな意見が披露される度に、その意見に正しさを感じる。そしてその反復の先に、作品としての解答が鮮やかに語られる。
その点を以て、本作を上質のミステリー小説と捉えることは許され得るだろう。
SF作品でありながら、サイエンスとは別にミステリーという取っ掛かりを持つことが『星を継ぐもの』の一つの魅力である。
- 作者: ジェイムズ・P・ホーガン,池央耿
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1980/05/23
- メディア: 文庫
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