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ナイフとフォークで作るブログ

小説とアニメ、ときどき将棋とスポーツと何か。


NHK『ヒーローたちの名勝負 〜貴ノ花 伝説の一番〜』を見て

相撲

北の富士貴ノ花


※番組は、2013年5月4日(土) 22:20~22:50に放送されました。

昭和47年初場所。中日に組まれた人気カードが、横綱・北の富士対関脇・貴ノ花。この一番、外掛けに弓反りとなった貴ノ花が左へうっちゃるような投げ。北の富士の右手が先に土俵につき、立行司・木村庄之介は「つき手」と見て、軍配は貴ノ花
しかし物言いがつき、「かばい手」とみなされ、判定が覆る。結果、行司差し違いで勝利は北の富士の手に…。場内は騒然、相撲協会には抗議の電話が殺到。「伝説の一番」となった。

番組サイトより)

貴ノ花北の富士も、名前は知っていたがリアルタイムで見たわけではないので、その実力については無知でした。けれどこの番組を見て、確かに名力士だと理解できました。


北の富士は足が長く、腰高に見えるけれど、ほとんど身体が上下に揺れません。その安定した姿勢を崩すことなく、前に出ながらの外掛け。しかも速い。これは分かっていても防ぎ切れません。加えて立ち合いの当たり、突きも破壊力があり、納得の強さです。


一方の貴ノ花。番組中、北の湖千代の富士が「足に根が生えている」と語り、元報知新聞記者・本土雅揮が「膝から下に、もう一つの魂を宿していた」と評したように、驚異的な下半身でした。
今にも倒されようとする瞬間でさえ、踵から膝にかけて真っ直ぐ天を指す。これまでに見たことのない景色でした。

昭和47年初場所


番組で取り上げられた「伝説の一番」は、個人的には取り直しが妥当だと思います。


ただ、あのうっちゃりが土俵際でなされていたら、もっとすんなりと北の富士の勝ちだったと思います。たしかに貴ノ花は腰をひねり技を掛けていますが、逆転の投げを決められる余力はないように感じました。
あ、でも俵のない場所であの粘りが可能なら、俵を利用してうっちゃりを決められたとも考えられます。


考えれば考えるほど、どちらの勝ち目も見えてきます。妄想が膨らみます。だからこそ「伝説の一番」足りえるのでしょう。


神事としての相撲


若くして亡くなった貴ノ花は病床で、本土雅揮記者に「勝ち負けはないんだよ、あの勝負には」と語ったそうです。


この言葉を聞き、相撲が神事であることを改めて確認できました。
神事には、例えば祭礼のように外形から明らかな神事があると同時に、人間が自らの身体をして神体を顕現させる神事もあります。「お相撲さん」とは、そういうことだと思います。


あの一番の貴ノ花北の富士は、まさに「お相撲さん」だったのです。
非常におもしろい番組でした。