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齋藤学の移籍について感じたこと(3)  〜 ゼロ円移籍への不満編 〜

 今回も斎藤学の移籍に関係したエントリーです。
 ただこれまで2回(愚痴編同情編)とは違い、齋藤学の移籍についての具体的な話題ではなく、日本サッカー界の移籍事情全般に関する、ある不満を記します。
 ずばりゼロ円移籍への不満です。(ゼロ円移籍とは、契約期間満了後の移籍であり、移籍金が発生しない、つまりゼロ円である移籍のことです)。
 今回の斉藤学の移籍はゼロ円移籍でした。これはマリノスが昨シーズンの終了後、彼の海外移籍という希望を汲み単年契約を結んだことによります。しかし、それでよいのでしょうか。もちろんよくありません。


 海外サッカーの移籍ニュースでは移籍金が幾らということが盛んに報じられます。例えば、ネイマールが2億2200万ユーロの移籍金でパリSGに移籍したといった具合です。
 一方で日本国内の移籍ニュースでは、そういったことはほとんど報じられません。それどころか海外ニュースであれば当然に「移籍金」とされる部分に、「(残りの契約に対する)違約金」という表現が使われたりします(※1)。違約金という言い方は正しいようで、まったく正しくありません。世界的に見ると、サッカー選手の移籍には移籍金(≒違約金)の伴うことが前提とされているからです。


 世界のサッカー界は、様々な地域の様々なレベルのクラブが有機的に絡み合いながら成立しています。そういった状況で、小規模クラブの有力選手がビッククラブに移籍する際に、移籍金が支払われることで小規模クラブにも資金が還元される仕組みができあがっています。
 そのために契約は複数年契約が基本となり、契約最終年を迎える前に、契約を延長するか移籍するかがクラブと選手の間で話し合われます。その話し合いが円滑に進まないまま契約最終年をむかえてしまうと、試合に出る機会を与えられない、つまりは干されてしまうこともありえます(※2)。
 もちろん、そういった移籍金による資金還流の仕組みが全て完璧に機能している訳ではありませんが、その仕組みのおかげで、異なった地域、カテゴリーに属する多数のクラブが存続できていることも事実です。


 しかし日本では、そういった常識が常識としては機能しません。結果的に、資金のあるビッククラブが、育成型クラブからリスク無しで有望な選手を引き抜く例も多く見られます。また、Jリーグクラブから海外クラブへ選手が移籍する際にも、対価としての移籍金を得られないことがしばしばあります。この状況は非常によくありません。
 なぜなら、チームが得られるべき資金を得られないという問題もありますが、それと同時に、選手が海外クラブから正当に評価されないという弊害さえ生じてしまうからです。


 海外クラブがJリーグクラブから選手を買う場合に、移籍金がかからないことが当然のこととされると、選手の実力に対する評価が甘くなり得ます。それは例えるならば、選手が、スーパーで半額シールの貼られた惣菜と同じ扱いを受けるということです。
 このことは反面では海外移籍のハードルを低くしてくれるかもしれません。しかしだからといって、それが選手にとって幸せなことでしょうか。そうではないでしょう。選手には、移籍金を払ってでも必要な選手だと評価され、さらに言えば、複数のクラブが移籍金額の多寡を競うような形で移籍していって欲しいです。
 そのためにも、ゼロ円移籍がまかり通る日本の現状は改められるべきだと思います。そしてそれは、日本サッカーの発展に向け必要不可欠なことだと思います。


 ではゼロ円移籍を無くするためにどうすればいいのでしょうか。
 まずマスコミが、国外と同じ基準で国内の移籍について報道して欲しいです。上の(※1)の例であげた大久保嘉人の移籍ニュースでは、移籍金が発生したことまでは分かりますが、その額は分かりません。
 一方、海外の報道ではサッカー選手の価値が、予想される移籍金の額によってランキング付けされたりもします。日本のスポーツ報道に関わる方々も、それくらいのことは知っているはずです。
 しかし未だにサッカーの移籍報道について、国内と国外で異なる基準から、ダブルスタンダードになされています。その二重基準は何とか解消していただきたいところです。
 そして、サポーター個々人でできることはなにかあるでしょうか。なかなか難しいかもしれませんが、応援するクラブから有力選手の流出があった際には、きちんと移籍金が回収されたかをチェックし、ときにはクラブに意見を投げかけるべきかもしれません。


 以上、齋藤学の移籍をきっかけに日本サッカー界からなかなか払拭されないゼロ円移籍への不満を記しました。


 ※1:【川崎】F東京・大久保が異例の1年出戻り 年俸半額6000万円で合意 : スポーツ報知


 ※2:2017-18シーズンにヘルタ・ベルリンに所属している原口元気がその典型例です。


 補足:下にリンクを貼ったニュースのように、ゼロ円移籍の問題に切り込んだニュースも近頃増えています。こういった視点からの報道がより広まることを期待したいです。
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