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将棋名人戦第3局 羽生善治名人-行方尚史八段 感想

 対局は朝日新聞社のサイトでニコニコ生放送ミラーリング映像が流れているのを見ていました。こちらは退出されることも無いのでありがたいのですが、コメントできないもどかしさもあります。
 今回の名人戦もそうですが、この頃はタイムシフトされないタイトル戦が増えているように感じます。ですので主催新聞社サイトでのミラーリングを、より積極的に行って欲しいところです。


 さて対局ですが、戦型は角換わり腰掛け銀でした。最近の将棋界では課題の戦型なので第1局(急戦模様の矢倉)、第2局(相掛かり)で採用されなかったことがむしろ意外でした。
 今対局の棋譜を見直してみると、中盤の前半くらいまでは先手行方八段のペースで戦いが進んでいるように見えるのですが、75手目▲4三歩と打った場面が少し気になります。ここは持ち駒に香車があるこでもあり、2九飛とぐっと引いて玉頭を攻める力を溜めた方が良かったようにも思えます。ただ72手目で金を取られていたので、金を取り返したいという考えと、先手玉が薄いので悠長に構えては居られないという考えがあったのかもしれません。実際、行方八段の変調をより強く感じさせる81手目▲6八金打を見ても、自玉の守りに不安を持っていたことが認められます。


 羽生名人の攻勢の端緒は82手目△7六歩でした。66手目で△7五歩と突き捨てた手を上手く利用しているあたり、流石としか言いようのない構想力です。同時に6筋の歩は4段目に留めているのも計算尽くのように見えてきます。強い人からすれば当然のことなのかもしれませんが、弱い者の目から見ると全てが予定されていたように思えてしまいます。


 終盤は次第次第に羽生名人優勢へと形勢が進んでいく、全く緩みのない指し回しで名人が勝ちを手にしました。
 終局間際の行方八段は時間に追われていることもあり、かなり憔悴しているように見えました。対局内容自体の面白さは言うまでもありませんが、同時に行方八段の姿に、人間が生み出したゲームでありながら、かくも人間を悩ませる将棋の怖さを目の当たりにした対局でもありました。