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ナイフとフォークで作るブログ

小説とアニメ、ときどき将棋とスポーツと何か。


恩田陸『Q&A』感想 

 恩田陸の作品では『夜のピクニック』が一番好きで、他には『六番目の小夜子』『ネバーランド』などが好みの作品です。つまりは青春(成長)小説です。何故こういった作品が好きなのかというと、登場人物の心情の状況、変化が繊細に描かれているからです。
 小説には、ほとんど当たり前に登場人物が居るわけですが、彼(彼女)達の心情、感情の揺蕩いまで丁寧に表現してくれる作家は決して多くはありません。その点、恩田陸の心情表現は素晴らしいです。たとえば『夜のピクニック』の貴子の考えや想いの変遷は、「歩行祭」という、言うなればただ歩き続けるだけの出来事を、とても躍動的な物語へと昇華しています。そして恩田陸のその心情表現の妙を楽しめる作品は、青春(成長)小説に集中しています。


 さて『Q&A』です。この作品は青春小説の類ではありません。ある事件についてのミステリー小説です。故に、登場人物の心情の機微を描くよりは、物語の構成、組み立てに力が入れられています。これまでに読んだ恩田陸の他の作品だと『MAZE[メイズ]』や『劫尽童女』などが種類的に近いかもしれません。あと、些かジャンルが違うと感じられるかもしれませんが『ライオンハート』も物語構成の巧みさという点では、似た要素があります。
 正直に言うと、恩田陸が物語の構成力を発揮した作品は、上に述べた心情を丁寧に表現した諸作品に比べると魅力を感じません。物語を組み上げることに力を割いた分だけ、心情表現が疎かになるように思われるからです。もちろん恩田陸は筆力の高い作家であり、どの作品を読んでも楽しめ、満足感も得られるます。ただ個人的な嗜好の問題として『夜のピクニック』や『六番目の小夜子』に惹かれ過ぎているのかもしれません。


 ここまでの書き方だと『Q&A』の魅力があまり伝わらない可能性が高いです。それはよいことではありません。
 ミステリーとしての『Q&A』はとても読み応えがあります。複雑な事件を、さまざまな視点から見せつつも情報が整理されているので滞りなく読めます。全編がQ&A形式で進む独特の展開も、見事に成功しています。それらのことは恩田陸の物語構成力の高さを如実に表しています。つまり『Q&A』はとても質の高いミステリー作品なのです。
 そしてこの『Q&A』、ラストが少し変化球になっています。そこには物語を回転(ループ)させることに執着を持つ作家恩田陸の性が垣間見られます。そのあたりも『Q&A』のちょっとした読みどころだと思います。

Q&A (幻冬舎文庫)

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