【印象深い文章】伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』より(1)
人には教育欲がある。一度きりの人生に自信がないものだから、他人に先生面して、安心するのだ。
引用元:伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』(文庫版)祥伝社(平成18年2月20日発行)p26
確かにそうですね。「人には教育欲がある」と思います。
酒場での人生訓、職場での説教、トリビアの披露、そしてまさにこのブログなんかもそうです。人は自分の知識、経験だとか嗜好を他人に伝えることで、自己肯定するものです。そういった自己肯定活動は顔の見える関係では立場の上の人が下に行い、ネットのような匿名性の世界では垂れ流しです。
立場の上下を利用しようが、無責任に放言しようが結局のところ自分の過去に対し、自ら意味付けを行っているだけです。
例えばこのエントリーについて言えば、小説から印象深い文章を見つけた自分、その文章に含まれる一般性を理解した自分、そしてそれを他人に語りつつ自嘲する自分、さらに自嘲的な態度を客観視できてるんだぜと悦に浸っている自分、そういった自分自身の過去(人生)について、好き勝手に意味付けしている訳です。
ただネットなどでの匿名教育活動は、受け手の取捨選択で解決しますが、フィジカルな上下関係でのそれは結構困りものです。だいたいは受け手が鬱陶しく感じているからです。
ですのでもし、自分が望まずに教育されちゃう側へ回ったときには、伊坂幸太郎もああ言ってたしと自分を慰めるヨスガとして、この文章を思い出してみてください。
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