ナイフとフォークで作るブログ

小説とアニメ、ときどき将棋とスポーツと何か。


2015-01-01から1年間の記事一覧

恩田陸『Q&A』感想 

恩田陸の作品では『夜のピクニック』が一番好きで、他には『六番目の小夜子』『ネバーランド』などが好みの作品です。つまりは青春(成長)小説です。何故こういった作品が好きなのかというと、登場人物の心情の状況、変化が繊細に描かれているからです。 小…

『長門有希ちゃんの消失』の鶴屋さんの声がよい!

『長門有希ちゃんの消失』面白いです。おっとりしていて、照れ屋で、でも強い芯も持っている長門さんは魅力的です。ただ原点『涼宮ハルヒの憂鬱』から物語世界を知った身としては、どうしてもハルヒの方を応援したくなります。 『長門有希ちゃんの消失』の原…

伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』から、気に入った文章を幾つか

「この名探偵というのは何のためにいるか、知ってる? 私たちのためよ。物語の外にいる私たちを救うためにいるのよ。馬鹿らしい」 興味深い意見だ、と僕も思った。名探偵は、物語の一つ上のレベルに立っている。そうだとすると、優午も同じ立場に違いなかっ…

将棋名人戦第3局 羽生善治名人-行方尚史八段 感想

対局は朝日新聞社のサイトでニコニコ生放送のミラーリング映像が流れているのを見ていました。こちらは退出されることも無いのでありがたいのですが、コメントできないもどかしさもあります。 今回の名人戦もそうですが、この頃はタイムシフトされないタイト…

伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』感想 〜城山と「勧善懲悪の物語が好きだ」ということの繋がり〜

伊坂幸太郎の小説を初めて読んだ。読み始めた時には知らなかったのだけれど、この作品は伊坂のデビュー作とのこと。 よいことだ。新しい作家に挑戦する際はデビュー作がうってつけだと思う。何故なら第一作を発表する時点で第二作、三作の出版を保証されてい…

『響け!ユーフォニアム』第5話

その表現が正しいか、正しくないかは別問題として、圧倒的に良い表現というものはあると思う。そして『響け!ユーフォニアム』第5話、久美子と高坂さんが下校する場面、交差点で髪を掻き上げながら笑顔を見せた高坂さんの動き、絵、表現は圧倒的に素晴らし…

『劇場版 境界の彼方 -I'LL BE HERE- 過去編』感想 〜栗山未来の美しさと「嬉しいな」という言葉〜

今週末に『劇場版 境界の彼方 -I'LL BE HERE- 未来編』が公開される。とても楽しみだ。 半月ほど前に『過去編』を見た。『過去編』は以前放送されたTVシリーズの再編集版なのだけれど、予想したよりずっと面白かった。作品の焦点を神原秋人と栗山未来の関係…

明日は将棋名人戦第二局

明日、明後日と将棋名人戦の第二局が指されます。第一局は60手で行方尚史八段が投了するという、名人戦史上最短手数の勝負でした。失礼を承知で言うと、見る側としては物足りなさを覚えました。とにかく第一局以上の熱戦を希望します! 戦型としては、相矢…

TVアニメ『響け!ユーフォニアム』2話までの感想

『響け!ユーフォニアム』のヒロイン黄前久美子の魅力がどこにあるか問われると、いまのところ返答に窮します。これといった個性を発揮していないし、どちらかと云うと周囲に流されやすい性格にも見えるからです。 ただ一つ個人的に面白いと感じる点は、彼女…

映画『アメリカン・スナイパー』感想

アメリカという国は、マッチョなヒーローが本当に好きな国なのだなあと、改めて思った。主人公クリス・カイルはその典型だったのだろう。彼はもともとカウボーイをしていて、そこからSEALsに志願したという物語になっていたが、カウボーイはやはりアメリカの…

森絵都『永遠の出口』を読んだ感想

『永遠の出口』は岸本紀子という一人の少女の小学三年〜高校三年までの十年間を、九つの章に分けて書いた物語だ。第一章が小三〜四の二年に跨ぐのを除くと、一章ごとに一つづつ学年を重ねていく。 つまりは成長小説である。それぞれの学年でのエピソードを読…

「将棋電王戦FINAL 第5局 阿久津主税八段 vs AWAKE」の感想

阿久津主税八段 vs AWAKE 2015年4月11日に行われた「将棋電王戦FINAL 第5局 阿久津主税八段 vs AWAKE」への感想は、大きく二つあります。 一つは阿久津主税八段が、AWAKEの2八角打を誘導する所謂「山口システム」を採用したことへの残念な気持ち。…

2015年春アニメは何を見るか(3)

すでに4月10日となりましたが、前回と前々回のエントリーの続きです。今年の春アニメで、個人的に興味のある作品を上げます。既に放送開始した作品もあります。その点はあしからず。『響け!ユーフォニアム』www.youtube.com 既に第1話は放送されていま…

2015年春アニメは何を見るか(2)

もう4月の第一週が終わろうとしていますが、前回のエントリーの続編です。『血界戦線』www.youtube.com 原作漫画を読みたいと思いつつ読んでいなかった作品なので、こうしてアニメ化されて助かりました。勝手に抱いているイメージは「アクの強い戦闘もの」…

2015年春アニメは何を見るか

2015年冬アニメで完走したのは『SHIROBAKO』と『アルドノア・ゼロ』の2本だけでした。今になって『ユリ熊嵐』『ローリング☆ガールズ』は見ておけばよかったかなとも思いますが、後の祭り。 さて4月からは春アニメが始まります。興味を惹かれる作品を幾つか上…

『アルドノア・ゼロ』全24話を見終えて、感想を

※以下、ネタバレあります。 『アルドノア・ゼロ』全編を通じて、一番関心したのは作画のクオリティーの高さです。動きのある戦闘シーンも、キャラクターの造作も特に崩れることはありませんでした。また、引きの絵を使って尺を埋めるようなこともありません…

プロ野球開幕と、サッカー日本代表勝利

3月27日、2015年のプロ野球が開幕しました。 筆者は西武ライオンズファンなので、開幕戦に勝利できて満足です。ライオンズの今シーズンの課題は、何といっても先発陣の安定です。ところが柱となるべき岸が戦線を離脱したため、いきなり崩壊しそうな情勢です…

今夜『SHIROBAKO』最終回

とうとうこの日がやって来てしまいました。最終回を目の前にして、これくらい心躍る作品は久しぶりです。楽しみな気持ちもあり、同時に寂しい気持ちもあります。 『SHIROBAKO』の魅力の一つは、前に進もうとする意志の強さです。宮森あおいはじめ皆が、愚痴…

米澤穂信『秋期限定栗きんとん事件』精読1

「それなら、わかる。……きっと、雪の降った朝、一番に道に出て、足跡をつけていくような気分」 (中略) 「それで、他のひとがもう足跡をつけられないように、ぜんぶ雪かきしちゃうの」 (米澤穂信『秋期限定栗きんとん事件』上巻 創元推理文庫 p47、p48) …

上橋菜穂子『夢の守り人』『虚空の旅人』を読んで

上橋菜穂子『夢の守り人』と『虚空の旅人』を続けて読んでいます。いわゆる<守り人シリーズ>の3作目と4作目の作品です。 大雑把な印象としては『夢の守り人』はタンダの内面を描いた「個人的な物語」であり、『虚空の旅人』はサンガル国を中心とした国家…

「将棋電王戦FINAL 第2局 永瀬拓矢六段 vs Selene」の感想

電王戦FINAL第2局は、永瀬拓矢六段が2七角不成と王手をかけた局面でSeleneがその角不成を認識できず、Seleneの王手放置による反則負けとなりました。 大まかな状況はこの記事を読むと分かると思います。将棋電王戦FINAL第2局で衝撃の結末 Seleneが永瀬六段の…

『SHIROBAKO』23話感想 〜 ずかちゃんが報われてよかった。〜

『SHIROBAKO』ラス前回、見ました。刮目して見ました。なんと濃い30分だったでしょうか。アニメは最終回が近づくと、未解決な部分に決着を付けるための段取り作業に陥りがちですが、流石は『SHIROBAKO』です。うまい具合にメリハリを持たせて退屈させません…

『SHIROBAKO』も残り2話。

『SHIROBAKO』が残り2話で終わるという現実を生き抜く方法を考えていますが、答えが出ません。毎週楽しく、やる気も貰える素晴らしいアニメです。 『SHIROBAKO』の絵は色使いがきびきびとしているので、見ているだけで気分がしゃんとします。その辺りもこの…

戦争ドラマとしての『マッサン』

ここ1ヶ月ほどNHKの朝ドラ『マッサン』は戦争を描き続けている。 『マッサン』はウィスキー作りのドラマと見せかけて結局のところ人間ドラマなのだけれど、それは朝ドラの性格上しかたがないことだと思う。しかしその人間ドラマの内でも、戦争に関係した題…

Kalafina『君の銀の庭』ばかり聴いている

『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語』を観て、ラストに『君の銀に庭』が流れてきたときに少し不思議な気分になった。 物語の終わり方はとても楽しいとか、愉快とか言えるようなものではなかったのだけれど、この曲の楽しげな、穏やかなメロデ…

「将棋電王戦FINAL 第1局 斎藤慎太郎五段 vs Apery」の感想

今回の電王戦FINALはプロ棋士側が非常に厳しい戦いを迫られると思っていた。しかし、本日の第1局で見事プロ棋士側の斉藤慎太郎五段が勝利した。しかも完勝といえる内容。熱戦への期待が、いやが上にも高まる。 ところで、対局をニコニコ生放送で観戦したの…

阿部共実を解釈する 〜関係性と状況〜

阿部共実の作品テーマの中の大きなものに、関係性と状況がある。 関係性は、好意について取り上げられることが多いのだが、一方通行であったり、交わらなかったり、ときに相思相愛となるような、色々な好意の有り様が描かれている。 状況について、一言に還…

明日(3/7)はJリーグ開幕戦!

いよいよ、2015年シーズンのJリーグが始まります。 開幕直前の3月5日、新たな日本代表監督にバヒド・ハリルホジッチ氏が就任したことが発表されました。これは勝手な想像ですが、監督就任の合意はそれ以前になされていたように思います。満を持してJリーグ…

青木俊直短篇集『レイルオブライフ』の感想

青木俊直さんを初めて知ったのは、ちょっとはっきりしませんが2011年頃だったと思います。Twitterで偶然に青木さんのツイートを目にし、そのアイコンに一目惚れしました。個人的な好み、ど真ん中の絵柄だったからです。 NHKの人気朝ドラ『あまちゃん』が…

米澤穂信『冬期限定チョコブラウニー事件』で小鳩常悟朗と小佐内ゆきはどこに辿り着くのか

昨日に続いて、米澤穂信の『〈小市民〉シリーズ』についてです。 『春期限定いちごタルト事件』を読み直していると、「羊の着ぐるみ」の章に或る文章を見つけました。ちなみに「羊の着ぐるみ」の羊は、害のない者つまり小市民のメタファーでしょう、というの…